『かぞえて みよう』
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「文字のない絵本の読み方がわからない」という声をよく聞きます。
確かに、文章がないのに「読む」って大人には理解できない芸当ですよね。笑
でもわたしは、文字のない絵本こそ絵本の本質が隠れている様に感じます。
そもそも、まだ文字の読めない子ども達は絵本の文章を読みません。読むのは「絵」です。
絵を見ただけでお話が浮かび上がってくる、様々な発見がある、そんな絵本こそが、絵本としてとても優れている良質なものだと感じます。
文字のない絵本でも、ページを眺めるだけで様々な物語が浮かんでくる。
そんな絵本を親子で眺めて、あれこれ自由に話したり、物語を想像してみたり。
そんな楽しみ方が、文字のない絵本の醍醐味だと思います。
この絵本も、文字は一切ありません。
場面は一貫して同じ。でも、数字と共に少しずつ風景が変わっていきます。
0。そのシーンは、何もありません。ただ真っ白な雪に覆われた丘と川だけ。
1。太陽と雲が出てきました。そして、家が1軒。雪だるまも1体。
2。家が2軒建ちました。ひとつは教会。教会の時計は2時を指しています。車が2台。うさぎも2羽。
3。雪が溶けて春がやって来ました。お花が仲良く3輪ずつ咲いています。教会の時計は3時。
...もうわかりましたか?
この絵本は、一貫して同じ場面を、1月から12月まで、1時から12時までの各シーンをそれぞれの数字をふんだんに盛り込んで描かれているのです。
物語はいくらでも見つかります。
だんだん増えていく家、そしてそこに住む人達の生活。
線路が通り、汽車が走り、だんだん生活感が出てきます。
なにがいくつあるのか数えるだけでも楽しいですし、それぞれの季節に物語を見つけるのもまた楽しい。
最後、12月のページは、もみの木の心憎い仕掛けもあります。
是非もみの木が何本あるか数えてみてください。
大人は当たり前の様に数を数えます。
月日、時間、お金、物の個数、身長や体重、身の回りには数が溢れていて、それが当たり前です。
でも幼い子どもにとって、数はまだまだ未知の世界。
3つある中でひとつ取ったら残りは2つ。そんな当たり前のことすら、子どもにとっては「なぜ?」になります。
日常生活の中で自然と数に触れさせてあげることも大切。
そして、こんな絵本で、自然と数が日常の中に溶け込んでいることを感じさせてあげる。
それもまた、子どもが数に親しむ第一歩になると思います。
決してこの絵本で、数を教えよう!とは思わないで下さいね。
是非親子で、安野さんの描くこの12ヶ月を楽しんでみて下さい。
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【328】『かぞえて みよう』
安野光雅
講談社 1975/11
160614
ayumi◡̈⃝