『たんぽぽ』
『たんぽぽ 』
荒井真紀
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春の花と言えば、桜と並んで思い浮かぶのはたんぽぽです。
絵本にもよく描かれる、子どもにも身近な花ですよね。
小さな頃、よくたんぽぽを摘んだり綿毛を飛ばしたりして遊んでいました。
今でもそんな風景をよく見かけます。
自然がごく身近にあった昔とはまた少し違う現代ですが、たんぽぽはコンクリートの隙間でも、団地の中でも、案外簡単に見つけることができます。
コンクリートのほんの狭い隙間に咲く黄色い小さな花を見ると、その力強さに勇気をもらえる気がします。
これだけ身近な花ですが、たんぽぽがどの様に咲き、どの様に綿毛となるのか、その生態をしっかりと知っているかと聞かれたらはっきりとは頷けませんでした。
でもこの絵本を読み、その力強さの片鱗に触れられた気がします。
荒井真紀さんの繊細で綺麗な表紙が印象的なこちらの絵本。
たんぽぽの生態を細かく描いた科学絵本です。
始まりは冬のたんぽぽ。
冬のたんぽぽは、地面にべったりと葉をつける様にして過ごしています。
冬の風の寒さや空気の冷たさを少しでも防ぐ為の工夫です。
根は地中深くに伸びています。
縦にダイナミックに描かれたそのページを見て、たんぽぽを引っこ抜いてその根の太さに驚いた記憶が蘇りました。
やがて春になり、たんぽぽの花は少しずつ大きくなり、黄色い花を咲かせます。
一輪の花に見えますが、たんぽぽの花は沢山の小さな花の集まりです。
そのひとつひとつに種があり、それがやがて綿毛となります。
よく育ったたんぽぽからは約200もの綿毛が取れるそうです。
そういった細かいたんぽぽの秘密を、丁寧に、綺麗な絵と一緒に説明してくれています。
この絵本1冊で、たんぽぽの生命力を垣間見るのとができる気がします。
しっかりとした科学絵本なので、小さなお子さんに読み聞かせるには少し難しいかもしれませんが、その絵を楽しむ事はできると思います。
まずはお母さんがこの絵本からたんぽぽのことを少し知って、お子さんに伝えてあげて欲しいと思います。
科学絵本と聞くと少し堅く難しいイメージかもしれませんが、とても綺麗な絵本なので入りやすいと思います。
何よりこれは「絵本」なので、小難しい専門書とは違う、わかりやすさと親しみやすさがあると思います。
季節の花や生き物を楽しむ際は是非、こんな科学絵本を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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【263】『たんぽぽ』
荒井真紀
金の星社 2015/03
160410
ayumi◡̈⃝