『にんじんさんがあかいわけ』

松谷みよ子 文
平山英三 絵
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今年は少しずつ、昔話の絵本も勉強しながら紹介していきたいと思っています。
今は小さな子どもにもわかるようにとデフォルメしてあったりアニメタッチにしてある絵本もありますが、個人的にはその様な昔話絵本を早くから読ませるよりも、子どもがわかる様な年齢になってからしっかりと描かれているものを読んであげる方がいいと考えています。
ですが、昔話には特有の言葉遣いや音などもあり、今の子ども達にはなかなか馴染みがなく読みにくい...という声もよく聞きます。
でも昔話はその言葉や音もとても大切で、それを今の言葉に言い換えてしまうとお話の本質が変わってきてしまうこともあります。
ですので、できるだけそのまま子ども達には伝えていきたいものでもあります。
小さな内から昔話の言葉や雰囲気に少しでも慣れさせておきたい。でも昔話を理解するにはまだ早い...そんな時にオススメなのが、この絵本。
「あかちゃんのむかしむかし」というシリーズで何冊か出ている内の1冊です。
むかし むかし
だいこんさんが
はたけで
くうくうって
ねてるとね
にんじんさんと
ごぼうさんが
やってきてねえ
だいこんさん
おふろへ いこうよ
そう いったって
こんな出だしから始まるこの絵本。
最初だけでも、昔話のリズムや音を感じることができます。
一番風呂はごぼうさん。
でもあまりに熱くてすぐ飛び出したので、まだまっくろけ。
次はにんじんさん。
熱いけどじーっと我慢してつかっていたからまっかっか。
最後はだいこんさん。
熱いのはいやだと水でうすめたぬるいお湯。
ゆっくりゆっくり身体中洗ったから、まっしろなのよ。
そんな風に、お話自体はとてもシンプルで面白く、小さなお子さんでも理解できて楽しめるものとなっています。
最後はちゃんと、「とっぴんぱらりのぷう」でおしまい。
昔話によくあるこの不思議な音の終わり方、実はとっても大切なものです。
昔話はよく「残酷だ」といわれる描写があります。
この事についてはまた別の機会に詳しく話したいと思いますが、そんな風に昔話は子どもを一気にその世界へと引き込む力があるのです。
ですが、お話が終わり、「とっぴんぱらりのぷう」といったお話とは関係のない言葉でぱちんと締めてあげることにより、子どもはその世界から現実の世界へと戻って来れます。
そうすることにより、子どもは「物語」と「現実」を理解し、例え残酷な描写であってもリアルなものとは別に考えることのできる力をつけるのです。
そうした昔話特有の終わり方も、この様な絵本で小さな頃から触れることができます。
早くから本物とは違う昔話の絵本を与えるよりも、こうした小さな子ども向けの、それでいてしっかりと昔話の質を保っているものを楽しんでもらえたらと、そう思います。
我が家もまだまだこのシリーズを楽しみたいと思っています。
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【297】『にんじんさんがあかいわけ』
松谷みよ子 文
平山英三 絵
童心社 1989/01
160514
ayumi◡̈⃝