『わたしの て』

『わたしのて 』
ジーン・ホルゼンターラー 文
ナンシー・タフリ 絵
晴海耕平 訳
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息子が生後2ヶ月の頃、初めて自分の手を認識した日のことを今でもよく覚えています。
握った手のひらを自分の顔の上まで持ち上げて、じーっと見ていた姿。
これは何だろう?と思っている様でもあり、息子の小さな発見が嬉しくもありました。
その手がやがておもちゃを握り、口の中には入り、ハイハイの手助けをし、伝い立ちを助け、ご飯を握りしめて食べる様になります。
手はたくさんの可能性があります。
この絵本にも、そんな手の活躍が描かれています。
ボタンをとめたり、ハサミを持ったり。
手のひらと指を使い、様々なことができます。
絵を描いたり、混ぜてかき回して形を作ったり。
何かを作り出すのも、手の仕事です。
時にはその手で誰かを傷つけることもあるし、その手で誰かを癒すこともあります。
読者の小さな子どもはただただ自分の手のひらの可能性に驚いたりワクワクしたりするでしょうし、大人が読むと、奥深いメッセージも感じます。
登場人物の顔は描かれていなく、どのページも手をメインに描いているので、読者は自然と感情移入しやすくなると思います。
絵本の最後は、こんな言葉で締めくくられています。
なかでも、いちばん すてきなのは、
わたしの ては、ほかのひとの てを
にぎれる ということ。
今息子は、わたしの手をしっかりと握ってくれています。
でもやがてその手をはなし、そしてまた別の誰かの手を握りしめる日がくるでしょう。
その時、息子の手のひらが、しっかりと愛情を伝えられる様に。
今わたしが、息子の手のひらに愛情を注いでいるのかもしれません。
辛いとき、悲しいとき、何かに立ち向かうとき。
側にいる人の手のひらは、とても大きな力となります。
最後に繋がれている手のひらの色は、みんな違います。
側にいて手を握ることに、人種も、性別も、関係ない。
今側にいる人の手を、しっかりと握っていたいと、そう思います。
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【273】『わたしの て』
ジーン・ホルゼンターラー 文
ナンシー・タフリ 絵
晴海耕平 訳
童話館出版 2002/09
160420
ayumi◡̈⃝