『ニャーンといったのは だーれ』
ウラジミール=ステーエフ 作
西郷竹彦 訳
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小さな子どもに対して無意識に使ってしまう赤ちゃんことば。
「まんま、たべようね」
「あっ、にゃんにゃんだよ」
「わんわん今日はいるかなぁ」
子どもが産まれ、今まで殆ど口にしたことのないような響きの赤ちゃんことばが自然と口から出るのには驚きました。
最近は赤ちゃんことばを使うべきではない、最初からちゃんとしたことばを使うべきだという意見もあるそうです。
確かにいつかは「まんま」ではなく「ご飯」と言わなければならないし、その移行は子どもにとって二度手間になるのかもしれないと思ったこともありました。
でもわたしは、赤ちゃんことばっていいなと思っています。
小さな子どもはそこにいるだけで、柔らかくあたたかい空気にしてくれます。
そんな空気に沿った赤ちゃんことばは、何だか自然な流れがするのです。
「ねこだよ」と言うより、「にゃんにゃんだよ」と言う方が、子どもの醸し出す空気に合っている気がします。
それに、小さな子どもは謂わば日本語初心者です。
「あー」や「んまぁ」しか発語ができない子どもに、難しい音の沢山入っている単語を聞かせるよりは、擬音の方が意思疎通しやすい様な気がします。
息子には赤ちゃんことばも含めて色々なことばを聞かせて来ていますが、いつのまにか「ごはん」「ねこ」「いぬ」と言う様になりました。
二度手間かも...というのは杞憂だったみたいです。
じゃあ本当の日本語はどうやって聞かせたらいいの?
そこで、絵本が活躍するんじゃないかと思います。
絵本には選び抜かれた正しい日本語が使われています。
普段の会話はつい赤ちゃんことばになってしまっても、絵本を通せば綺麗なことばを聞かせてあげることができます。
そんなところでも、わたしは絵本に沢山支えられてきているんだろうなぁと感じます。
と、相変わらずの長い前置きですが笑
今日はそんな赤ちゃんことば、ではないですが、動物の鳴き声にまつわるお話を1冊紹介させて下さい。
「にゃんにゃん」や「わんわん」はそもそも、その鳴き声から来ています。
子どもにとって動物の鳴き声、擬音というのは、本当に身近な存在なんでしょうね。
今日の絵本は、『ニャーンといったのは だーれ』です。
こいぬがソファの側のじゅうたんの上で寝ていると、どこからか「ニャーン」と声が聞こえました。
こいぬは顔を上げますが、何も見当たりません。
でも確かに聞こえる「ニャーン」という声。
こいぬはその声の主を必死に探し始めます。
様々な動物に「きみかい、ニャーンといったのは?」と聞きますが、どれもこれも見当はずれ。
しかもその度に何らかのトラブルに巻き込まれてしまいます。
それでも諦めずに「ニャーン」の声の主を探すこいぬ。
一体「ニャーン」と言ったのは誰なんでしょう?
実は「ニャーン」の正体は、最初から絵本に登場しているんです。
ですので、読者はその正体を知っています。
知らないのは、このこいぬだけ。
読者はちょっとした優越感に浸りながらこいぬを応援しつつも、まるで見当ちがいのこいぬに笑いが込み上げてくると思います。
様々な動物の鳴き声も登場するので、子ども達は真似をしながら楽しむこともできます。
さて、お話の最後にようやくこいぬの前に姿を現した「ニャーン」の正体、きじねこ。
こいぬも鳴き声で応戦しますが、ここはねこの方が一枚上手です。
絵本ではよく、犬は真っ直ぐで素直でちょっぴり間抜けな印象、猫は一枚も二枚も上手でスマートな印象で描かれますが、この絵本も例に違わずそんな印象を抱かされます。
でもそんないかにも子どもらしい犬の姿に、子どもは自分を重ねて読むことができるんでしょうね。
最後は「ニャーン」の正体を知り、満足そうなこいぬの姿が。
とても愛らしいその姿に、思わず目尻が下がってしまいます。
子ども達と「よかったね」とこいぬを労いながら、絵本を閉じてもらえたらと思います。
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【212】『ニャーンといったのは だーれ』
ウラジミール=ステーエフ 作
西郷竹彦 訳
偕成社 1969/06
今日はお散歩の途中、2匹のねこに出会いました。
「あ!ねこだ!」と喜んだ息子。
気ままな猫はすぐにどこかへ行ってしまいましたが、ねこの絵本を色々と読んでいる時に出会えてよかったです◡̈♡
160221
ayumi◡̈⃝