さんじのえほん。

3時のおやつみたいに、絵本が日々のちょっとした幸せに⋆* 2児の子育てをしながら絵本や子育てにまつわるあれこれをお話しています。マイホームは絵本ハウス。絵本に囲まれた暮らしを親子で楽しんでいます◡̈京都在住。絵本講師✎

『かぞえて みよう』

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かぞえてみよう (講談社の創作絵本) 』

安野光雅


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「文字のない絵本の読み方がわからない」という声をよく聞きます。

確かに、文章がないのに「読む」って大人には理解できない芸当ですよね。笑

でもわたしは、文字のない絵本こそ絵本の本質が隠れている様に感じます。

そもそも、まだ文字の読めない子ども達は絵本の文章を読みません。読むのは「絵」です。

絵を見ただけでお話が浮かび上がってくる、様々な発見がある、そんな絵本こそが、絵本としてとても優れている良質なものだと感じます。

文字のない絵本でも、ページを眺めるだけで様々な物語が浮かんでくる。
そんな絵本を親子で眺めて、あれこれ自由に話したり、物語を想像してみたり。
そんな楽しみ方が、文字のない絵本の醍醐味だと思います。

 

この絵本も、文字は一切ありません。
場面は一貫して同じ。でも、数字と共に少しずつ風景が変わっていきます。

 

0。そのシーンは、何もありません。ただ真っ白な雪に覆われた丘と川だけ。
1。太陽と雲が出てきました。そして、家が1軒。雪だるまも1体。
2。家が2軒建ちました。ひとつは教会。教会の時計は2時を指しています。車が2台。うさぎも2羽。
3。雪が溶けて春がやって来ました。お花が仲良く3輪ずつ咲いています。教会の時計は3時。

 

...もうわかりましたか?
この絵本は、一貫して同じ場面を、1月から12月まで、1時から12時までの各シーンをそれぞれの数字をふんだんに盛り込んで描かれているのです。

物語はいくらでも見つかります。
だんだん増えていく家、そしてそこに住む人達の生活。
線路が通り、汽車が走り、だんだん生活感が出てきます。

なにがいくつあるのか数えるだけでも楽しいですし、それぞれの季節に物語を見つけるのもまた楽しい。

最後、12月のページは、もみの木の心憎い仕掛けもあります。
是非もみの木が何本あるか数えてみてください。

 

大人は当たり前の様に数を数えます。
月日、時間、お金、物の個数、身長や体重、身の回りには数が溢れていて、それが当たり前です。

でも幼い子どもにとって、数はまだまだ未知の世界。
3つある中でひとつ取ったら残りは2つ。そんな当たり前のことすら、子どもにとっては「なぜ?」になります。

日常生活の中で自然と数に触れさせてあげることも大切。
そして、こんな絵本で、自然と数が日常の中に溶け込んでいることを感じさせてあげる。
それもまた、子どもが数に親しむ第一歩になると思います。

決してこの絵本で、数を教えよう!とは思わないで下さいね。

是非親子で、安野さんの描くこの12ヶ月を楽しんでみて下さい。


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【328】『かぞえて みよう』
安野光雅
講談社 1975/11


160614
ayumi◡̈⃝