『みずたまり』
『みずたまり 』
殿内真帆
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梅雨の季節。
雨のやみ間にお散歩をすると、みずたまりと出会います。
子どもはつい、バチャバチャとやりがちですし、それこそが子どもらしい行動でもあり楽しそうに見えます。
でもたまに、そんなみずたまりをじっとのぞいている子にも出会います。
何かいるのかな?そう思って見ても、それはただのみずたまり。
でも子ども達はもしかしたら、みずたまりとそっと会話をしているのかとしれません。
そんな子どもの姿を描いた、素敵な絵本に出会いました。
雨上がり、ふくちゃんが外へ出てみると、大きなみずたまりができていました。
勿論バシャバシャと入ります。が、突然みずたまりから声をかけられてしまいます。
「おいおい、しずかにしておくれ。ここから いろんな ものを みてるんだ」
何が見えるのか尋ねるふくちゃん。
みずたまりは、毎日そこから見える景色を教えてくれます。
なないろのにじ、飛行機、あめんぼを見る子どもや鳥たち、たまに葉っぱに邪魔をされたり。
でも日を追うごとに、みずたまりは小さくなっていき、見える景色も少なくなっていきます...。
「みずたまり」を扱った絵本は沢山ありますが、その多くはそこに飛び込む子どもの楽しさを描いたものです。
ですがこの絵本は、みずたまりそのものの視線が描かれています。
雨が降ったらみずたまりができる。
でもそのみずたまりは、いつの間にか消えてなくなってしまう。
その頃には太陽が顔を出していて、みずたまりがあったことなんてすっかり忘れてしまっています。
雨が降り、みずたまりができ、そして消えていく。
そのシンプルでもあり、ちょっぴり切なくもある過程を、繰り返しの展開と同一場面で子どもにもわかりやすく描いてくれています。
梅雨の時期、晴れ間はとてもありがたく嬉しいです。
ですがこの絵本を読むと、「早くまた、みずたまりに会いたいな」、そんな風に思ってしまいます。
福音館書店さんから刊行されている『とけいのあおくん』が人気の殿内さんの新刊です。
『とけいのあおくん』もそのちょっぴりレトロでおしゃれな雰囲気が大人の方にも人気の作品ですが、この絵本もまた、大人の方も楽しめるものとなっています。
お子さんと楽しむのもよし。
憂鬱な雨の日を過ごす大人が読んでもまたよし。
是非この優しい世界観を楽しんでみて下さい。
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【322】『みずたまり』
殿内真帆
フレーベル館 2016/05
160608
ayumi◡̈⃝