さんじのえほん。

3時のおやつみたいに、絵本が日々のちょっとした幸せに⋆* 駆け出しの絵本講師、1日1冊絵本を紹介しています◡̈

『ちょうちょ はやく こないかな』

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甲斐信枝

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小さな子どもは、とても純粋です。
真っ直ぐに自分の力を信じています。

「うまくいかなかったらどうしよう」と思う前に、まず行動。
見守る親はひやひやすることもありますが、自分で動き、失敗したことは、その子の生きる力となっていきます。

春。新しいこの季節、新たな挑戦をする子も、新たな門をくぐる子もいるでしょう。
そんな時に読んでもらいたいのが、この絵本です。

ちょうちょを待つオオイヌノフグリ
甲斐さんの繊細で美しい絵が特徴的です。

「きれいに さいたから ちょうちょ、きっと きてくれる。」

自信に満ち溢れたオオイヌノフグリは、小さな子どもそのものです。

小さな子どもにとって、自己肯定はとても大切なこと。
自己肯定をしっかりとしているオオイヌノフグリの語りのこのお話をお母さんからしてもらえる子どもは、きっと「あなたは大丈夫」というメッセージを受け取れると思います。

ですが、なかなかオオイヌノフグリの所にちょうは来てくれません。

他の花に行くちょうちょを見送りながら、オオイヌノフグリも少しずつ自信をなくしてしまいます。

この経験も大人になる過程で必ず通る道です。

うまくいかないこと。失敗してしまったこと。全力を出したのに、成果がついてこないこと。

そんな時に、「もうだめだ」と諦めたり自暴自棄になったりするのではなく、「成功するまでやる」「納得するまでやる」、そういったやり抜く力もまた、自己肯定がないとつきません。

自分を信じていないと、最後まで諦めないなんてできないですもんね。

弱気になったオオイヌノフグリですが、最後はようやくちょうちょがやって来てくれます。

「あー よかった、やっと きてくれた。」
「ちょうちょさん、みつ たくさん のんでいってね」

オオイヌノフグリの安心と取り戻した自信は、読み手の子どもにもきっと伝わることでしょう。
信じ抜く力、そんなこともこの小さな花は伝えてくれます。

みつを吸われたオオイヌノフグリは、最後のページ、花びらを散らして少し寂しい姿となっています。
それでも残された花や茎を懸命に伸ばし、ちょうちょを見送っています。

「さようなら、あしたも きてね」

科学絵本の第一人者とも言える甲斐信枝さん。
そんな彼女だからこそ描ける、命の終焉と自然界のサイクル。
言葉では何も表していませんが、その絵を見た子どもは、自然とそれを感じ取ることができると思います。

お話、子どもに向けたメッセージ、季節と自然の姿を描いた美しい絵。どれを取っても見劣りすることのない、素晴らしい絵本です。

お母さんの優しい声で、この季節に是非、「あなたは大丈夫」とこの絵本を通して伝えてあげて欲しいと思います。


子ども達の新たな一歩が、この先の大きな一歩となります様に。


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【257】『ちょうちょ はやく こないかな』
甲斐信枝


160404
ayumi◡̈⃝