さんじのえほん。

3時のおやつみたいに、絵本が日々のちょっとした幸せに⋆* 2児の子育てをしながら絵本や子育てにまつわるあれこれをお話しています。マイホームは絵本ハウス。絵本に囲まれた暮らしを親子で楽しんでいます◡̈京都在住。絵本講師✎

『わたしと あそんで』

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マリー・ホール・エッツ 文/絵
与田凖一 訳

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今日は息子のはとこちゃんのお家へ遊びに行きました。

お姉ちゃんがもうすぐ3歳。
弟くんは今10ヶ月で、つい先日産まれた気がするのに、成長の早さにびっくりでした。

お姉ちゃんへの誕生日プレゼントを持って行ったのですが、そのプレゼントとして選んだのが、この絵本。

マリー・ホール・エッツの『わたしと あそんで』です。

小さな女の子が、はらっぱで出会う様々な生き物達に「あそびましょ」と声をかけます。

でも突然声をかけられた生き物達は、びっくりして逃げてしまいます。

少し考えた女の子。
今度は無闇矢鱈に声をかけるのではなく、池の側の石に腰掛けてじっとすることにしました。

すると、さっき逃げて行った生き物達が、徐々にゆっくりと戻って来ます。
ばったやかえるやうさぎにへび。
最後に戻って来た鹿の赤ちゃんは、女の子の頬を舐めてくれます。

みんなが遊んでくれて、女の子はとても嬉しそうです。

とてもシンプルなストーリーで色も多様されているわけではないのですが、この絵本は子どものことをとても考えられて作られてある素晴らしい作品だと思います。

最初は次々と声をかけては逃げられていた女の子。
じっと座っていたのは ふてくされたわけでも疲れたわけでもなく、「なぜ逃げられてしまうか」を自分で考えたからです。

それが「いきなり声をかけて驚かせてしまったから」だと気付いた女の子は、今度は自分から行くのではなく、じっと待つことにしたのです。

次々と生き物達が戻ってくる時の女の子の「お見通し」という表情が、女の子の知恵を物語っています。

3歳くらいになると、「お母さんと一体」だった世界から少しずつ「お母さん」と「自分」に分かれていき、「お母さんが全て」の世界から一歩足を踏み出す時期に差し掛かります。

幼稚園などの集団生活が始まる時期でもあり、「自分」と「他人」を否応なく認識せざるを得ない時期でもあります。

今までは「自分が」で全て通っていたことが、少しずつ通らなくなっていく。
自己中心的だった世界に、少しずつ人との関わりが増えていき、自分だけでなく人の気持ちを考えることが必要にもなってきます。

「どうしたら遊んでもらえるか」。
それには、「自分の」だけではなく、「相手の」気持ちも考える思いやりの心が必要になってきます。

この絵本は、その方法をそっと子どもの心に伝えてくれると思います。
このお話を楽しんだ子ども達はどこかできっと、「待つ」ことの大切さや楽しみを感じる心を持つことができると思うのです。

そしてこの女の子を最初から最後まで見守ってくれている、優しい眼差しの太陽。

この太陽こそが、母親だと思います。

今までは手を繋ぎ、側にいながら子どもを守っていた母親。
でも一歩外の世界へ踏み出した子どもの手を、いつまでも握り続けることはできません。

手を放しても、心は放さず。

いつも太陽の様に見守り、万が一失敗してしまった時にでも、「大丈夫だよ」とあたたかく包んであげる。
この絵本には、そんな母親の愛情もたっぷりと詰まっているのです。

卒園、卒業の後は、新しい世界への扉が待っています。
そんな子ども達に、「大丈夫だよ」と語りかけてくれる絵本。

お母さんの優しい声で、帰ってこれる居場所で、是非読んであげて欲しい1冊です。


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【245】『わたしと あそんで』
マリー・ホール・エッツ 文/絵
与田凖一 訳


160324
ayumi◡̈⃝