さんじのえほん。

3時のおやつみたいに、絵本が日々のちょっとした幸せに⋆* 2児の子育てをしながら絵本や子育てにまつわるあれこれをお話しています。マイホームは絵本ハウス。絵本に囲まれた暮らしを親子で楽しんでいます◡̈京都在住。絵本講師✎

『根っこのこどもたち 目をさます』『ねっこぼっこ』

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今日は「啓蟄」。
冬眠から目覚めた生き物たちが動き出す時期です。

ここ数日一気にあたたかく春らしくなりました。
今年の冬は暖冬と言われたかと思えば一気に寒くなってインフルエンザの流行が遅れたりしましたが、こうして啓蟄の時期にはちゃんと温かくなる。
何だか気候に振り回されている気がしますが、そもそも人間だってそんな自然の一員。
季節の移り変わりを自然と肌身に感じられる人でありたいと、そう思います。

気象庁はそんな季節の移り変わりを動植物の様子で見る「生物季節観測」を続けているそうですが、近年、温暖化や都市化の影響で身近な生き物を観測対象とすることが難しくなっているそうです。

生き物達が住みにくい環境になっていることは、普通に生活していてもよくわかります。
人間が中心となっている今の世の中。そんな人間1人1人にできることは、とても小さなことかもしれません。
ですが、こうして四季を意識し、感じることのできる幸せ。それを忘れずにいることこそが、日本の四季を知る大切な意義である様な気もします。

そんな今日は、この2冊の絵本を紹介させて下さい。
タイトルは違いますが、実はこの絵本原作が同じで、訳者が違うという興味深い絵本です。

今日の絵本は、『根っこのこどもたち 目をさます』『ねっこぼっこ』です。

お話は、春になり土の中で目を覚ます根っこのこどもたちの1年間を描いています。

「根っこのこどもたち」と訳しているのが前者、「ねっこぼっこ」と訳しているのが後者の絵本です。

春の服を自分たちで縫い、「土のおかあさん」に見せに行きます。
後者の絵本は、「土のおかあさん」ではなく「大地のかあさん」です。

こんな少しの違いでも、訳者によって絵本が大きく変わってくるのがわかります。

春になり地面の上に出て行った彼らは、虫たちとあたたかな季節を喜びますが、やがて冷たい風を感じ、また地面の中へ戻って行きます。

そこでは優しいおかあさんが待っていて、また春になるまであたたかく守ってくれるのです。

読者はこの絵本を通して春のあたたかさ、生命の輝き、四季の移り変わりを感じることができると同時に、帰る場所のある幸福もまたしっかりと感じることができると思います。

あたたかく楽しい季節を地面の上で過ごしたこどもたちは、寒い冬になるとまた地面の下で優しいおかあさんに守られる。
春の絵本、四季の絵本であると同時に、母親の愛を感じることのできる素敵な絵本でもあります。

この2冊、前者は石井桃子さんの訳、後者は秦理惠子さんの役になります。
石井さんの文章は安心感、安定感のあるしっかりとしたもので、秦さんの文章はテンポ良くリズミカルに読むことができるものです。

好みもありますが、小さなお子さんでしたらまずは秦さんの『ねっこぼっこ』をオススメします。
個人的には、石井さんの文章もとても好きなので、是非読み比べてみて欲しいと思います。
『根っこのこどもたち 目をさます』の方は装丁もとても素敵なので、大人の方にもオススメです。

原作は同じなので、絵は全く同じになります。
ここが、絵本ならではの面白さですよね。

きっと今日もどこかで、「根っこのこどもたち」「ねっこぼっこ」が目を覚ましていることでしょう。

彼らが安心してあたたかな季節を楽しみ、また土の中へ戻れる自然を、子ども達へしっかりと伝えて引き継がなければと感じます。

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【225】『根っこのこどもたち 目をさます』
ジビレ・フォン・オルファース 絵
ヘレン・ディーン・フィッシュ 文
童話館出版 2003/03

【226】『ねっこぼっこ』
ジビュレ・フォン・オルファース 作
秦理恵子 訳
平凡社 2005/04

一気に春が来たような気候のここ数日。
外に出ると今までと風の匂いが変わったことを感じます。

季節の変わり目はどの季節でも空気が変わりますが、この冬から春へ変わる空気が1番好きです◡̈♡


160305
ayumi◡̈⃝