さんじのえほん。

3時のおやつみたいに、絵本が日々のちょっとした幸せに⋆* 2児の子育てをしながら絵本や子育てにまつわるあれこれをお話しています。マイホームは絵本ハウス。絵本に囲まれた暮らしを親子で楽しんでいます◡̈京都在住。絵本講師✎

『かさじぞう』

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かさじぞう(こどものとも絵本) 』
赤羽末吉 画

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もうすぐ大晦日。
今年も残すところあと3日です。

来年の目標は、もう立てられましたか?

わたしは毎年目標をいくつか掲げるのですが(達成してないものも勿論沢山です笑)、来年の目標のひとつに、「昔話を深く学ぶ」ということを挙げています。

これは今年の目標としても掲げていたことですが、まだまだ学びが足りず、来年に持ち越しです。

昔話は学べば学ぶ程奥が深く、かじったくらいではなかなか理解しきれません。

息子はまだまだ昔話を楽しむのは難しいですが、いつか昔話は必ず息子と楽しみたいと思っています。
その為にも来年はより深く、昔話を知っていきたいです。

ということで、今日紹介させてもらう絵本は、恐らくこのブログでは初めての日本の昔話絵本です。

昔話絵本はなかなか、紹介させてもらうのが恐れ多いというか...。笑 ちょっと知ってる程度ではなかなか踏み出せないものがありました。

まずはわたしにとって、大好きと言えば語弊がありそうですが、とても大切な昔話絵本を紹介させて下さい。
この絵本を紹介するなら年末だと、ずっと決めていました。

今日の絵本は、『かさじぞう』です。

雪の降りしきる年の瀬、おじいさんは傘を5つこしらえて、街へ売りに出かけます。
でもにぎやかな年越し市では、かさは到底売れません。

「かさや、かさや。かさは いらぬか」

歩いても歩いてもかさは売れず、とうとうかさを背負って帰ることになりました。

吹雪になった帰り道、差し掛かった野原に吹雪にさらされた6体のおじぞうさまがいました。

「あやぁ、むごいことだなぁ。はだかで ゆき かぶって さぞ さむかろう」と、おじいさんは持って来たかさをひとつずつかぶせていきます。
最後のひとつは、自分が被っていたかさを。

真っ白になって帰って来たおじいさんを、おばあさんはあたたかく迎えます。
そんな2人にお正月の朝、不思議な出来事がおこります...。

「かさじぞう」のお話は有名なので、知っている方が殆どだと思います。

「かさじぞう」を読むなら、まずは赤羽末吉さんのこの『かさじぞう』だと、自信を持って言えます。

墨で描かれた雪の世界。
日本の北国の美しい景色と、瀬田貞二さんの見事な再話。

赤羽末吉さんと言えば、『スーホの白い馬』や『だいくとおにろく』『おおきなおおきなおいも』も有名です。
この『かさじぞう』は、そんな赤羽末吉さんが初めて手掛けた絵本です。

茂田井武さんの『セロひきのゴーシュ』に影響を受け、絵本を描きたいと考えた赤羽さんが最初に選んだモチーフが、「雪」でした。
「雪を墨絵で描きたい」と編集者である松居直さんへ申し出たそうです。
雪の話なら昔話の「かさじぞう」だろうと、再話を瀬田貞二さんにお願いし、完成したのがこの『かさじぞう』です。

並々ならぬ情熱を注がれた絵本だからこそ、ひとつひとつの絵、言葉、表現がとても洗練されている。
お話自体、心に優しく響く昔話「かさじぞう」だからこそ、こうした素晴らしい絵と言葉で子ども達に伝えたい。そう思います。

とても素晴らしい処女作ですが、まだ赤羽さんの完成形だとは言えません。
この『かさじぞう』を受けて、よりその世界観、雪の表現を広げた傑作が、『つるにょうぼう』です。
是非こちらも、読んでみて欲しいと思います。

年の瀬にぴったりの、あたたかい昔話。
是非子ども達に、この素晴らしい絵と共に伝えてあげて欲しいと思います。

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【158】『かさじぞう』
赤羽末吉 画

昔話絵本は、沢山出版されています。
そして、選ぶのがとても難しい。

でも、昔話だからこそ、しっかりとした絵本を子ども達へ届けてあげて欲しいと思います。

中にはお話の大切な部分が切り取られていたり、教訓めいた所だけがクローズアップされていたり、キラキラした絵になっていたり...と、ちょっと考えてしまう様なものもあります。

昔話は、人から人へ、口から耳へ、伝えられてきた文化のひとつです。
日本には日本の、外国には外国の、風土や歴史や感性に根付いたお話です。

だからこそ、そう簡単には描けないと思います。
文章を紡げる作家、絵を描ける画家は限られていると思う。
様々な昔話絵本が出版されている中で、わたし達は子どもへ伝えるべき昔話絵本を、しっかりと吟味する必要があると思います。

また来年、少しずつ昔話絵本も紹介させてもらえたらと思います。
その際はわたしなりに、しっかりと作品解釈をし、「これは」というものを責任持って紹介させてもらえたらと思います。

その為にも、しっかりと昔話に関する学びを深めていきたいです。


151229
ayumi◡̈⃝