『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』
『いたずらきかんしゃちゅうちゅう (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本) 』
バージニア・リー・バートン 文・絵
むらおかはなこ 訳
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京都駅の近くに、梅小路蒸気機関車館という施設があります。
実際に蒸気機関車に乗れたり展示があったりと素敵な施設なのですが、今月30日で閉館となってしまいます。
また鉄道博物館が京都にできるので、そちらで機関車も楽しめると思いますが、昔からある施設なので少し寂しくも思います。
昨日は息子を連れて、最後にそこへ遊びに行って来ました。
そんな今日紹介させていただく絵本は、やっぱり機関車の絵本。
機関車と言えば、ちゅうちゅうを紹介しないわけにはいかないですね。
今日の絵本は、『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』です。
もう、内容を説明するのがおこがましいくらいの名作です。
ちいさな機関車ちゅうちゅうはいつも、ちいさな街からおおきな駅まで客車を引いて走っていました。
でもちゅうちゅうは、ひとりでならもっと速く走れるのに...と思っています。
そんなある日、ちゅうちゅうに絶好のチャンスが訪れます。
線路にたった1人で立っていたのです。
今しかない!とちゅうちゅうは、1人で走り出してしまいます。
絵本はちゅうちゅうの脱走劇です。
身軽になったちゅうちゅうは、ここぞとばかりに生き生きと走り回ります。
そのスピード感、躍動感は、見ていて爽快です。
周りが慌てふためく姿も、何だか面白い。
思わずちゅうちゅうの脱走を応援したくなってしまいます。
ちゅうちゅうの機関士や車掌さんも慌ててちゅうちゅうを追いかけますが、脱走したちゅうちゅうを責め立てる事はしません。
読んでいる子どもはそこに、安心感を覚えると思います。
そしてこの絵本、絵も文章も全て含めてひとつの作品として成り立っているのが本当に素晴らしい。
文章の構図が絵と絶妙にマッチしているんです。
まるで文字が線路の様にくねくねと曲がっていたり、絵の間にうまい具合に文章が入っていたり。
元はアメリカの絵本なので、翻訳はれた村岡花子さんはさぞかし苦労されたと思います。
この技法はよく、バートンの作品に見られます。
最早一種の芸術作品です。
白黒で描かれたシンプルな作品です。
でもその物語構成やお話のスピード感、絵の躍動感、どれを取っても一級の素晴らしい作品です。
内容は白黒ですが、見返しの部分はカラーで描かれています。
その対比がまたいいんです。
是非見返しの部分もじっくりと堪能して下さい。
古い作品ですが、今の子ども達も夢中になるこの絵本。
良い絵本は時代を超えて読み継がれていく。
梅小路蒸気機関車館は残念ながら閉館してしまいますが、ちゅうちゅうはいつまでも、子ども達の心の中に走らせてあげたいです。
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【34】『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』
バージニア・リー・バートン 文・絵
むらおかはなこ 訳
福音館書店 1961/08
日本で読まれている外国の作品には必ず、翻訳者がいます。
当たり前ですが、翻訳者を見逃している人が結構います。
この作品の翻訳者は、村岡花子さん。
赤毛のアンの翻訳で有名ですが、こんな絵本も翻訳されています。
翻訳者が違えば、絵本の内容も雰囲気も変わってきます。
有名なシェル・シルヴァンスタインの『おおきな木』は、新訳は村上春樹さんですが、以前は本田錦一郎さんの訳で出版されていました。
同じ絵本ですが、訳者が違うだけでちょっとした表現や受け取り方が変わり、だいぶ雰囲気も変わりました。
翻訳絵本を訳者に注目しながら読んでいると、「この方の言葉の運びは好きだな」とか、「この方はよく訳されてるな」などの発見もあります。
翻訳絵本は、絵本の作者だけでなく翻訳者も作者の一員です。
少し大人目線の楽しみ方ですが、翻訳者にも注目しながら読むのもまた、面白いです。
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ということで、昨日は梅小路蒸気機関車館へ行って来ました。
機関車にも乗れて、間近で見る事ができて、小さな鉄オタさんは喜んでたみたいです◡̈♥︎
我が家の大きな鉄オタさんの方が喜んでたかな...(´◡`;)笑
帰りは京都駅伊勢丹で開催されている、【世界の絵本作家展Ⅳ ART×絵本】へ行って来ました。
とても素晴らしい原画展でした。
息子は主人が見ていてくれたので1人で見て来ましたが、息子にも見せてあげたかったなぁ。
なかなか美術館などは、息子連れで行く勇気がありません(´◡`;)
でも息子にも、沢山本物を見せてあげたいと思います。
150827
ayumi◡̈⃝